リスクを取るかどうかの判断をする。


そもそも最初からこのプロジェクトは間違っていた。
いまだに赤字を垂れ流しながら続けている。
会社の看板を守るために。


約2年前にシステムの企画、基本設計を終えて、システム開発費用を見積もった。
2億円を超えた。
当時の部長は、業績不振の部門を立てなおすため、どうしてもこの開発案件を取りたかった。
そこで彼は私をプロジェクトマネージャーにした。


それまで私は、数千万円程度の小さなプロジェクトを次々とこなしてはいたが、一桁違うこのプロジェクトを成功させる自信などなかった。
が、「ステップアップのつもりで」という彼の強い薦めで引き受けてしまった。


まともな会社ならこのような高額の案件は経営幹部の会議で審議したであろう。
それをしなかったことが、間違いの始まりである。
会社の経営を左右するようなリスクの高い案件を一社員の判断に任せて良いわけがない。
その案件を手持ちのリソースで成功させることができるかどうかを見識のある複数の人間が検討すべきであった。


私はこのプロジェクトから多くを学んだ。
そのうちの一つが「リスクを取るかどうかの判断をする」ということである。
リスクを取らないという決断もできる。
リスクを取るからには得るもの、失うものを事前に考えておく必要がある。
何も考えずに「行け行けどんどん」では、経営しているとは言い難い。


今回はリスクを取ったため、失うものが多かった。
取ってしまったものは仕方がない。
得たものは後で探すしかない。


経営者が高額の授業料を支払い、私を含めたプロジェクトのメンバーが滅多にない経験をさせていただいた。
今後のプロジェクトに活かすための勉強をさせていただいた。
と考えるようにしている。


明日につながる失敗ができた。
個人ではできない経験ができた。
という点で私は幸運である。